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小説「ひとこと言うたるわ」(05) プロローグ5/5

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「ひとこと言うたるわ」

●プロローグ(5/5)

              *

 浩太は何が何だかわからなかった。面接が終わり、自転車を押しながら涼子は浩太と帰りの道を歩いている。その間、涼子はひとことも口をきかない。不審に思ったが、黙っていた。

 (偏見や。まるで母子家庭は健全でないみたいやないか。うちにはどうすることもでけへんことや。そんなことで浩太が落とされなあかんのか!)涼子はくやしくてしかたがなかった。
 そういえば自転車で来ていたのは涼子たちくらいのもので、他の家庭はみんな車で両親そろって受験に来ていた。見るからに裕福そうな人々ばかりだった。(とどのつまりは、お呼びやあらへんということやったんや)
 ふいに涼子が立ち止まった。
「うぅ……」ハンカチで目を覆った。
「どないしたん? お母ちゃん」浩太は驚いて尋ねた。
 ハンカチで涙を拭い、鼻をすすりながら涼子は言った。
「あのな、浩太はあの学校、入られへんのや。……お母ちゃんのせいなんや……ごめんな。ほんまにごめんな」涙がまたこぼれた。
 浩太はしばし黙った。二人の間に時間が流れた。
 浩太が沈黙を破った。
「ぼく、あんな学校キライや!」
「…浩太…」浩太は赤鬼のように小さな顔を真っ赤にして、両の拳を握りしめ怒っていた。
「お母ちゃんを泣かすような学校なんか、ええ学校のはずがない。あんな学校、こっちからおことわりや!」
 涼子は自転車を停め、しゃがんで浩太を抱きしめた。
「ありがとう。浩太、ありがとうな。おまえはお母ちゃんにはもったいないくらいええ子や」
 夕日が二人を優しく照らし長い長い影をつくっていた。ちょうど、いつか浩太が描いた絵とそっくりだった。

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