小説「ひとこと言うたるわ」(03)プロローグ3/5
学校のトイレで長ズボンに履き替えさせると、ちょうど着席のベルが鳴った。午前中は試験だ。涼子はしゃがんで浩太と目線を合わせて言った
「ええか。あせったらあかんで。日頃の力が出せれば浩太はぜったいうまくいく。お母ちゃんがついとるからな」涼子は笑顔を見せた。浩太も笑顔を返した。涼子は浩太の背中をポンと叩いた。「さ、はよ行き。しっかりな」浩太は走って教室に入っていった。
子供たちの親は、試験の間、父兄控え室で待っていることになっていた。涼子も席について、備え付けのお茶を飲んでいた。
涼子は緊張していた。何日も前から、質疑応答の練習を頭の中で繰り返していた。「あなたのお子さんは、ひとことでいうとどんな性格ですか?」「おたくの教育方針はどのようなものですか?」「お子様には将来、どんな職業についてもらいたいですか?」・・・
そのような質問に対する答えを、もう一度暗唱していた。
終了のベルが鳴った。子供たちが試験会場を出て、次々と控え室の親たちの元へ帰ってきた。浩太も子供らに混じって入ってきた。涼子が手を挙げて呼ぶと、笑顔で駆け寄ってきた。
「お母ちゃん。そんなに難しくなかったで。ぼくな、全部の問題、2回見直したんや。どっこも間違うてへんはずや」
涼子は浩太を抱き寄せた。
「そうか! がんばったな。偉いで。あとは午後の親子面接やね」
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