努力することは簡単だが、努力し続けることは難しい。ぼくは彼の後姿を見るたびに、そんなことを思う。
車通勤の帰り道に、一軒の健康器具展示体験会場がある。ちょっと怪しげだが、ぼくは一時期、通っていたことがある。がんこな不眠症なのだが、その機械を使うと不思議とよく寝られた。
12畳ほどの狭い店舗。店員は20代の青年ひとりだ。本来は1時間以上使うのが目安だというその機械を、体験会場では無料で20分使わせてくれる。その間、彼は体のしくみと機械の効能について説明する。商品の優秀さを力説するわけでもない。「買え」とは決して言わない。そこが気に入っていた。
おもにお年寄りが多いが、開店前は待ち行列ができるくらい人気がある。何かしら、効果があるのである。事実、「不眠、便秘、腰痛、肩こり」に関しては厚生労働省から医療用器具として認可を受けている。それは、まあいい。
彼は、シビアな環境で仕事をしている。ひと月の体験者数が一定数に満たないと、本部によって翌月にはその会場は閉鎖されてしまうのだ。そして彼は、閑職にまわされる。売り込んで歩くような「攻め」の商売ではない。体験に来た人を迎え入れる「待ち」の商売だ。通りがかりなのでつい見てしまうが、閑散としている日も多い。胃が痛くなるような日々もあるだろう。
しかし彼は、来た人に効能を説き、健康の大切さを説き、口コミで来店者を開拓していく。地道な作業だ。そして、その毎月のハードルを何とか越え続けて、もう5年、あの場所で店舗を開いている。
努力することは簡単だが、努力し続けることは難しい。ぼくは彼の後姿を見るたびに、そんなことを思う。
最近のコメント